金属の結晶構造には種類があって、その代表例として
体心立方格子、面心立方格子、六方最密格子があります。
金属の種類によってこれらのうち、どの結晶格子配列を取るのか決まっています。
上図では鉄は常温では体心立方格子構造です。
ところが、鉄は温度によってその結晶格子の配列が異なるということで、少し調べてみました。
鉄の変態
温度を上げたり、下げたりしたために、ある結晶構造が他の結晶構造に変化することを変態といい、その温度を変態温度(変態点)といいます。
純鉄とは炭素をほとんど含まない純粋な鉄のことで、日常ではほぼ使用されることはなく、炭素などを混ぜた状態で使用されます。
純鉄は温度によりα鉄(フェライト)、γ鉄(オーステナイト)、δ鉄(デルタフェライト)の3つの形態に変態し、常温下では通常フェライトになっています。
純鉄は約910 ℃以下ではα鉄(フェライト)と呼ばれ体心立方格子構造を取り、
約1400℃以下ではγ鉄(オーステナイト)と呼ばれ面心立方格子構造を取り、
約1536℃以下はδ鉄(デルタフェライト)と呼ばれ体心立方格子構造を取り、
約1536 °C以上は液体となります。
体心立方格子は原子の充填率が低く(68%)、一見すると隙間が多く見えますが、隙間の形状がつぶれていて、球状の原子が入りづらくなっています。
それと比較して面心立方格子の方は充填率(74%)が高いにもかかわらず、隙間の形状が球状のもの受け入れることができる形となっており、面心立方格子の方が炭素が混じりやすくなっています。
変態温度と熱処理
この変態点の存在が、鉄鋼材料が熱処理によって特性を変えることのできる大きな理由になります。
熱処理の方法は一般的には「焼き入れ」「焼き戻し」「焼きなまし」「焼きならし」とあります。
- 焼き入れ 鋼を高温に加熱し、その後急冷することで、硬化させます。
- 焼き戻し 焼き入れ後の鋼を再加熱し、適度な硬さや靭性を保つ方法
- 焼きなまし 鋼を高温に熱しゆっくり冷却することで材料をやわらかくする方法
- 焼きならし 鋼を高温に熱し、空冷することで組織を均一化し、強度や靭性を高める方法
どの温度まで上昇させて急冷するのかゆっくり冷やすのか、何で冷やすのか。
これら熱処理の組み合わせによって目的に応じてその特性を最適化することができます。