有機化学高分子の分野で勉強したプラスチックについて、まとめてみました。
プラスチックとは
ギリシャ語の「plastikos」、型に入れて作ることができるという意味の言葉に由来しています。
日本産業規格JISの定義によると、「必須の構成成分として高重合体を含みかつ完成製品への加工のある段階で流れによって形を与え得る材料」
具体的には、炭素、水素、窒素、塩素などの原子が鎖状や網目状に連結したポリマーを合成し、更にこのポリマーを主体として、充填剤、補強剤などを配合して得る材料のことを指します。
プラスチックの種類
プラスチックは「熱可塑性プラスチック」と「熱硬化性プラスチック」と大きく2つに分けられます。
熱可塑性プラスチック
「熱可塑性プラスチック」とは熱を加えると軟化して流動体となり、冷え固まると固体になるもの。
「熱可塑性プラスチック」は高温で溶けて液体になったり、冷えて固まったりするチョコレートに例えられます。
熱可塑性プラスチックの特徴は、
高温で、短時間で成形できるため生産性が高く、加熱すれば再度成形できるためリサイクルが行いやすく、耐久性に優れていますが、加熱するたびに物性は低下します。
熱可塑性プラスチックは下記の3つに分けられます。
- 汎用プラスチック、
- エンジニアリングプラスチック(エンプラ)
- スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)
これら3つがさらにそれぞれ、結晶性プラスチック、非晶性プラスチックに分けられます。
汎用プラスチック
汎用プラスチックは安価で大量生産され、生活用品として使用されるものが多くプラスチック生産量の約8割を占めています。主鎖が炭素のみの単純な構造で製造しやすく、100℃ほどで溶解します。
例)ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)
エンプラ
エンプラは機械的強度に優れ、150℃ほどで溶解。主鎖が炭素のみの汎用プラスチックと違って、他の非炭素原子やベンゼンも含むので、高機能になりますが、無機薬品と非炭素原子が反応しやすいので、耐性は低くなります。
例)ポリアミド(PA)、 ポリカーボネート(PC)
スーパーエンプラ
スーパーエンプラはエンプラの中でも特に耐熱性に優れたものを指します。150℃以上で溶解
例)ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)
熱硬化性プラスチック
「熱硬化性プラスチック」は熱を加えると一時は流動体になるが、次第に化学変化を起こして固まり、固い物質に変化してしまうもの。
例えていうと、フライパンで温度を上げて焼くと固まってしまって元には戻らない、目玉焼きのようなものです。
熱硬化性プラスチックは架橋構造なので、結晶を作りません。
例)フェノール樹脂(PF)、メラミン樹脂(MF)
結晶性プラスチック、非晶性プラスチックとは
結晶性プラスチックは、冷え固まる際に分子の一部が規則正しく並び、結晶が作られますが、結晶部分と非結晶部分の両方が混在しています。この結晶部分の比率(結晶化度)によって物性が変化します。
非晶性プラスチックは、分子の構造が無秩序で、透明度が高く、寸法精度が高いのが特徴。(結晶化すると体積が収縮するため)
結晶化度による影響
- 成形収縮率
- 耐薬品性
- 塗装、接着性
- 透明性
- 温度特性
成形収縮率
結晶化度が高いほど、体積が収縮するため成形収縮率が大きくなります。そのため結晶性プラスチックは、成形収縮率にばらつきが生じやすいです。
耐薬品性
結晶性プラスチックは、結晶部分に薬品が入り込みづらいので、薬品に対して強い性質があります。
塗装、接着性
結晶性プラスチックが耐薬品性であることや、接着剤の容器が結晶性プラスチック(PE)でできていることから考慮して、塗装、接着しづらいです。
透明性
結晶部分と非晶部分では光の屈折率が異なるので、結晶性プラスチックは不透明になります。
温度特性
結晶性プラスチックは結晶部分と非晶部分の両方が混在しているため、ガラス転移点と融点を持ちます。
非晶性部分の物性が大きく変化する温度をガラス転移点、結晶部分が流動するようになる温度を融点と呼びます。
ゆっくり冷却すると結晶化度は高くなり、剛性は増しますが、急速に冷やすと、透明性が向上します。
ペットボトルに使用されているポリエチレンテレフタレート(PET)は結晶性樹脂で本来は不透明だけれど、結晶化し始める温度付近で急速に冷却し、透明度を保っています。
プラスチックについて知ると、プラスチック製品に記載されているアルファベットの省略文字が気になるようになりました。先日割れてしまったコーヒーメーカーの部品には「PPE+PS」と記載されていました。
PPEは熱可塑性プラスチック、エンプラ非晶性プラスチック、ポニフェニレンエーテル
PSは熱可塑性プラスチック、汎用非晶性プラスチック、ポリスチレン
PPEは単体では熱流動性が低く、成形温度が高くなるので、成形加工性を向上させるためにポリスチレンとコンパウンドしてポリマーアロイされています。
プラスチックってなに? | 日本プラスチック工業連盟 (jpif.gr.jp)